編集部ワキガになる原因とワキの下に発生しがちなのはなぜですか？ また、男性よりも女性の方が多い理由も教えてください。

先　生汗は3つの分泌腺から出ているのですが、中でもアポクリン汗腺から出るアポクリン汗が、皮膚表面の常在菌に分解されることで独特の異臭を発生させる…これがワキガの原因です。アポクリン汗腺は、ワキの下や陰部、おヘソの周りなど特定の部位に多く分布するため、限られた部位に発生するケースが高いのです。また、男性よりも女性の方が脂質が多い事もワキガの発生を高める要因のひとつです。

編集部体臭を気にする個人差は様々で、神経質になってしまう人も多いかと思います。そこで、自分が多汗症かワキガかを判断する目安ってありますか？

先　生多汗症とワキガの大きな違いは、分泌液の違いにあって、強い臭いを発生させるかどうかという点です。多汗症は、体温調節の必要がない時でも大量の汗をかく症状をいいます。このときの汗は、エクリン汗という99％が水分の無色無臭のものなので、汗くささ程度にニオイはあってもワキガのようなニオイは発生しません。
ワキガは、遺伝による体質が影響している場合も多く、家族にワキガ体質の人がいる方やワキの下に黄色い汗ジミができる場合などは注意してみてください。

編集部 先生のクリニックでは、超音波を使った治療を行っているそうですが、具体的にどんな施術なのでしょうか？

先　生 ワキガ・多汗症の治療には様々な方法がありますが、当院では「超音波治療」を行っています。超音波とは高い周波数を持つ音の一種で、その振動エネルギーを活用した治療です。この方法は、周辺の皮膚組織を傷つけることもなく、原因となる汗腺だけを破壊することができるので、たった数ミリの切開で済み、縫合も1針程度で終わりです。治療時間も30分程度で、入院の必要も術後の通院もありません。

編集部それに加えて、麻酔にも特長があるということですが？

先　生 当院では、患者さんの負担を軽くするために「カリフォルニア式局所麻酔」を使っています。従来のタイプは、麻酔を注入する時に圧迫されるような刺激があって、術後に麻酔が切れると疼痛を感じますよね？ しかし、カリフォルニア麻酔の場合、これらの圧痛をほぼクリアして痛みを最小限に抑える事ができる麻酔です。小学生のお子様でも我慢できる程度なんですよ。麻酔の浸透性やPHを人間の体液とほぼ同じに調整しているので、身体に無理なく浸透し、術後も穏やかに麻酔効果を維持し、術後の疼痛を和らげてくれるのです。

編集部入院も通院も必要なしということですが、そうはいっても術後のお手入れなど大変じゃありませんか？

先　生 いえいえ。抜糸の必要のない糸を使いますので、手術直後から通常通りの生活を過ごすことができます。術後間もないうちは、清潔を保つため患部にガーゼを当てておきますが、シャワーは当日から大丈夫です。 傷痕も、わずか数ミリ〜1センチにも満たないですから、日数がたてば自然に目立たなくなります。また、ワキガの原因となる汗腺や皮脂腺を根こそぎ破壊して吸引除去するので、再発の心配はほとんどありません。

編集部 しかし、まだ日本では「超音波治療」の普及は少ないと聞いています。先生は、どんな事に気をつけていらっしゃいますか？

先　生 近頃、超音波の優れた特性は医療の分野でも幅広く利用されています。この特性である超高速伸縮運動を利用し、ワキガ・多汗症の治療の効果を飛躍的に高めることができたわけですが、患者さんの身体的負担がこれほどまでに軽減できたことは大きなメリットだと思います。それに、お忙しい時間を割いて来院していただくわけです。身体の負担ももちろんですが、できるだけ時間の縛りを生じさせないことも大事ですよね。また、ひとりひとりの症状や軽重度の違いを的確に判断できる医師の症例経験や、熟練した技術を提供できるように今後も配慮していきたいと思っています。